暫定語意

虚構、創作あるいはフィクションに纏わる話

映画「ラ・ラ・ランド」 渋滞に鳴り響くクラクション


gaga.ne.jp


 最近観た映画の中でいえば、「ラ・ラ・ランド」は断トツにわかりやすかった。
 夢を追い求める者ならば誰しも、何を貫き何を犠牲にするか、その問題にはまず間違いなく直面する。なぜならば、人は夢を追うだけでは生きていけないからだ。世間を無視する行動をとり続ければ、それだけ周囲との軋轢が生まれる。夢を追うこと、それは犠牲を選択することと等しいともいえるのだろう。

 

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「ラ・ラ・ランド」とアカデミー賞の話

 

業界人ウケする映画というのがこの世の中には一定数存在する。今年、アカデミー賞最多六部門を受賞した「ラ・ラ・ランド」もそういった類いの作品の一つだろう。

この映画を観た人ならば、容易に想像できると思う。というのも、ハリウッドの第一線で活躍するような業界人というのは、少なくとも人生で一度は、この映画の登場人物たちと似たような葛藤を経験をしたはずだ。明日食べていけるのかどうかもわからない残酷な世界に身を投じ、夢に憧れ、酔い、迷い、嘆き、そういった苦悩の末、最終的に流れ着いた場所がハリウッドのスポットライトの下であり、今の彼らの地位なのだ。

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映画「虐殺器官」 ツッコミ不在の恐怖に君は抗えるか

 

project-itoh.com

 

 虐殺器官という小説を一つのブラックコメディとして捉えている人は意外と少ないかもしれない。

 自分にとって虐殺器官とは、最高に下品でなおかつグロテスクな形をしたブラックコメディだった。もし間違って吹き出したりでもした瞬間、周囲から不謹慎だと罵られるようなそんな質の悪いタイプの冗談。でも、そういった世間の凝り固まった生真面目な雰囲気すら、この小説はさらに笑いを助長させるためのスパイスとして転化してしまう。そんな悪意の塊のようで、しかしながら完全には否定できないそんなリアリティのあるところが、虐殺器官の魅力の一つだったように、今となって思う。

 

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