暫定語意

虚構、創作あるいはフィクションに纏わる話

映画「パトリオット・デイ」 当事者と外野の温度差

監督 ピーター・バーグ

キャスト マーク・ウォールバーグケビン・ベーコン 他


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 日本から遙か約一万㎞、太平洋を越えた彼方の地で発生したテロリズムを我々日本人はどのように認識できるか。突き放すような他人行儀で冷たい物言いであることは承知の上、それでもあえて言わせてもらうならば、現地と接点を一切もたない人々にとって液晶ディスプレイ上で放映される記録映像は、所詮一つのフィクションに過ぎない。たとえそれがどれだけ生々しくリアリティのある体験だったとしても、身を以て体感したリアルには程遠いものだ。百聞は一見にしかずという諺があるように、他人から伝聞した情報というのは実際に見聞きした出来事とは明らかに一線を画す。

 

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映画「夜明け告げるルーのうた」 解説と考察

 監督 湯浅政明
 脚本 吉田玲子

 

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 内気な少年カイが人魚ルーと知り合い、次第に心を解放していく、そんなお話。


 高校生バンドのサクセスストーリーのように見せながら、一方で、思春期な少年と純粋無垢な人魚との心の触れ合いをやってみたり、よくある漁村の揉め事を扱ったと思えば、今度は、民族伝承が紛れもない現実として立ち塞がり村全体を襲ってみたりと、なかなかやりたい放題である。もちろんそれは、物語として一貫性に欠けるという意味ではなく、テンポ良く展開を転がすための工夫に相違ない。事実、それぞれ小出しにしていた諍いは、物語終盤には綺麗さっぱり片付いてしまう。ギャグも丁寧に挟んでくれるし、そういう意味で、本作は観客に優しいエンタメ系映画といえるのかもしれない。

 

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映画『ノー・エスケープ 自由への国境』 解説と考察 

 

監督はホナス・キュアロン。
キャストは、ガエル・ガルシア・ベルナルジェフリー・ディーン・モーガン他。
原題は「No Escape

 

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 本編開始から僅か数十分足らずで、物語は大きく動き出す。


 アメリカ合衆国への不法入国を試みるメキシコ人集団が、ある一人の男に命を狙われる。砂漠地帯を横断する一行。彼らの遙か後方から男が忍び寄る。中年のその男は高台からスナイパーライフルを構えると、不法入国者たちに向け銃撃を開始する。最初の犠牲者はガイド役の男だった。銃声が聞こえたとき、不法入国たちの目の前には、すでに死体が転がっていた。すぐさま事態の異常性を察知した彼らは、叫び声を上げ、遮蔽物のない砂漠地帯を当てもなく逃げ惑う。

 

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