暫定語意

虚構、創作あるいはフィクションに纏わる話

映画「キングスマン」 礼儀知らずを屠る礼節

監督 マシュー・ボーン
キャスト コリン・ファース タロン・エガートン 他

 

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 娯楽作品と割り切って鑑賞すれば傑作。真面目に観察してしまうと理解に窮する作品。最後の試練や花火のシーンなど、ツッコミを入れたくなる気持ちは痛いほどわかる。わかるのだが、そういった見方をしてしまった時点で、たぶんこの映画はもう十分には楽しめない。なぜなら、「キングスマン」は意図的にそのように設計された作品だからだ。悲劇的な気分に浸りたいがためにお笑いコンサートへ通う人間はいない。空腹を紛らわすためにコンサートライブに向かう人間もいない。それと同じように、人生哲学を学ぶために「キングスマン」を観るべきではない。

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映画「ブレードランナー2049」 虚構に生きて死んでいく

監督 ドゥニ・ビルヌーブ
出演 ライアン・ゴズリングハリソン・フォード 他

 

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 一般的に、前作の知名度が高ければ高いほどその続編は作りにくいと言われている。ファンの思い入れが強い作品というのはそれほどに扱い辛いものだ。しかし逆に、その思い入れを利用してやれば、ある一定レベル以上の佳作を生み出すことはできるのかもしれない。あるいは、続編として生まれてしまった悲劇を観客に共感してもらえれば、たとえ前作の壁は越えられずとも、その続編は「良い続編」として後々まで語られるかもしれない。「ブレードランナー」の続編「ブレードランナー2049」はまさにそんな作品の典型だった。「偽物の子供」としての葛藤、そのテーマはこの映画自体が抱えている呪いなのだから、前作のファンであるならばその過程と結末を見捨ててはおけないはずだ。

 

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映画「散歩する侵略者」 思考の停滞と崩れ落ちる日常

 

監督 黒沢清

出演者 長澤まさみ 松田龍平 長谷川博己 他

 

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 これだけゾワゾワする映画は久しぶりだった。特に宇宙人の描き方については素晴らしいの一言に尽きる。よくもまあ、あれだけ不快なキャラクターに仕上げたものだ。宇宙人たちのキャラ造形もそうだが、あの日常の枠からはみ出さない絶妙な終末観と、日常が侵食されていく不快感はそう簡単に醸し出せるようなものではない。その意味で、本作は「SF」というよりもむしろ「ホラー」に分類できるのかもしれない。

 

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