暫定語意

虚構、創作あるいはフィクションに纏わる話

小説『何者』 自己分析のその先で躓く就活生たち

 

 朝井リョウの原作と、三浦大輔の映画を観ての感想。

 小説が苦手という人や、感受性が高すぎて精神的ダメージを受けやすい人は映画から観た方がいいかもしれない。ジャンルの構造上仕方ないところはあるが、基本的には原作のほうが心理描写が読みやすいのでそっちをお薦めたい。

 余談だが、作者は新入社員として働きながら本作を書き上げたらしい。最年少直木賞作家のバイタリティー恐るべし。

 

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映画「虐殺器官」 ツッコミ不在の恐怖に君は抗えるか

 

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 虐殺器官という小説を一つのブラックコメディとして捉えている人は意外と少ないかもしれない。

 自分にとって虐殺器官とは、最高に下品でなおかつグロテスクな形をしたブラックコメディだった。もし間違って吹き出したりでもした瞬間、周囲から不謹慎だと罵られるようなそんな質の悪いタイプの冗談。でも、そういった世間の凝り固まった生真面目な雰囲気すら、この小説はさらに笑いを助長させるためのスパイスとして転化してしまう。そんな悪意の塊のようで、しかしながら完全には否定できないそんなリアリティのあるところが、虐殺器官の魅力の一つだったように、今となって思う。

 

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